読書記録: 外国語学習の科学: 第二言語習得論とは何か 白井恭弘

読書記録: 外国語学習の科学: 第二言語習得論とは何か

白井恭弘

国語学習に興味がある人は一読をおすすめ。

言語習得に関する現在までの様々な考え方を、論文を紹介しながら解説しています。

最後に効果的な外国語学習についてまとめています。

以下、本の内容に沿って自分の経験を振り返ってみます。ネタバレしてます。

1-4章まで

・言語間の距離について

韓国語と中国語を勉強してみて、言語間の距離の近さで習得がすごく楽になるというのを実感しました。

中国語は簡単な文法項目を覚えれば、ある程度複雑な文章でもかなり漢字から意味を推測することが可能です。

前置詞や冠詞、語形変化などの日本語にない文法もないので、注意するのは語順くらいになるのもストレスフリーで良いです。

英語を学んだことによって、ドイツ語の習得も楽になったと思います。冠詞や数の概念に疑問を持たずにそういうものだと思って学べたのは良かったです。

・言語転移

個人的には、既に知っている言葉が学習中の言葉に影響する、よりも、学習中の言語が既に知っている言語に影響をして、出来ていたことができなくなる方が困った経験があります。

英語を勉強してからは、「work」が日本語の中にすごく入ってきて、うまく機能する、とかちゃんと動く、と言いたいときに「働く」と言ってしまって、自分で変な日本語だなと思うのに中々直せないということがありました。

また、ドイツ語の勉強を始めてからは、英語を話そうとするとドイツ語の単語が頭に入ってきてごちゃごちゃになったり、語順がドイツ語の影響を受けすぎて、その英語はドイツ語っぽすぎると言われることもありました。

その経験から、より日本語に近い言語を学んだ時や、アラビア語ハンガリー語など、全く違言語を学んだ時、どれとどれが強く影響しあうのだろうからというのがとても気になって、そこから多言語を学びたいと思うようになりました。

・外国語学習に成功する人

個人的に周りの人を見ていて思うのは、以下の人です。

①正しい学習をしている

②動機が強く、たくさん勉強している

③必要性に駆られている

①については、本を読んでもらえればと思いますが、正しくないというのは、例えば意味もわからずとりあえず単語をノートに書きまくるとか、文法を綺麗にノートにまとめる、などです。

②は、当たり前ですが、触れる時間を費やせば費やすほど、インプットも増やせるので、ちゃんと自分で時間を作って勉強している人は伸びます。

③本人が、今のレベルでいいと思えばそれ以上伸びません。旅行であまり困らない程度のレベルまでいくと、そこを抜け出すのは大変だと思います。私の周りでは、留学して3ヶ月程度でなんとなくブロークンな言葉でコミュニケーションをとれるとようになったあと、1年滞在しても全く伸びていない(ように見える)人がほとんどでした。

BICAとCALPについては、母語でできないことは外国語でもできるわけない、というのを感じます。私は日本語でも日常会話が苦手でとても苦痛に感じており、外国語でも出来ません。

そのかわり本を読んだり、学校のテスト等は得意で、外国語でも論文を読んだり筆記テストで良い点を取ることはできます。

日本語で人とのお話が好きな人は、言葉はそこそこでも現地でもたくさん友達がいます。

外国語でこんな能力を身につけたい、というもながあるなら、まずは母語でそれができるようになる必要があると思います。

・社会言語能力

外国語で最後まで身につけることが難しいと思うのが、発音と、社会言語能力です。

発音は、通じれば良いのでネイティブのようになる必要はないと思っています。

上級者になればなるほど、社会言語能力が問題になってくると思います。言語の運用能力に問題があるように思えない場合、実は適切な言い回しを知らなかったり、文化的なことを知らなかったりするだけでも、ちょっとした失礼がその人の性格だと思われてしまいます。

・インプット+アウトプットの必要性

言葉の学習について、圧倒的なインプットは本当に助けになると思います。仕事でメールを書くとき、母語の日本語でさえ、適切な表現がわからない時はググって他の人の例を探すくらいです。

また、これも母語ですが、私が会社の先輩に相談事をした時に「大切なことを教えてくれてありがとう」と言ってもらったことがありまして、そうやって返事をすればいいのか!とすごく勉強になりましま。

聞いたことのある表現を頭の中にストックしておくことでスムーズにやりとりができると思います。

・インプット仮説と自動化仮説

インプット仮説については、

個人的な経験では、意識的な学習をしたことが、無意識の習得を加速させると思います。

私は英語圏とドイツ語圏にそれぞれ1年留学しました。英語は単語と文法をかなりしっかり勉強してから留学し、ドイツ語はそこそこの状態でした。最終的に英語の方はかなり自由に使えるようになりましたが、ドイツ語はそこそこで留まっている感じです。

意識的に学習しておくことで、理解可能なインプットの量が圧倒的に増えるので、その状態でたくさんのインプットを浴びると習得が加速すると思っています。

意識的な学習が徐々に無意識になるという説はかなり実感があります。

私は今英語とドイツ語に関しては、日本語を介さず使っていることが多いですが、文法項目に関しては完全に意識的に学習して、今では特に意識せずに使っています。